2013年11月26日火曜日

数字で振り返るシリコンバレーVCの投資傾向、過去5年間で計3兆円の投資と3308件の投資案件



シリコンバレーの資金調達関連のニュースを聞く度に、動く金額のケタが日本の場合とひとつやふたつ違うことにいつも驚かされます。

そこで、シリコンバレーのベンチャー・キャピタル(VC)の実情が分かるデータがないかな〜と探していたところ、調査会社のCB InsightsがORRICKS、SVB、GLG Shareの協力を得て定期的に発行している、イカしたレポートThe Silicon Valley Tech Venture Capital Almanac』を発見しました!

2009年から2013年までの過去5年間のシリコンバレーVCの動向をグラフ化した示唆に富むデータです。今回はその一部をちょこっとだけ紹介したいと思います。


2013年は過去5年間で最高の投資金額、案件数の見込み


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まず、こちらのグラフは過去5年間のシリコンバレーの投資金額、投資案件数を表したものです(2013年度のグレーの部分は予想値)。※今回のレポートでいう投資案件とは、実際に投資を実行した案件を指します。

2009年から2010年あたりでは1年に450〜550件だった投資案件ですが、2013年度は934件にのぼる見込み。これは過去5年間で最高の数字です。加えて、2013年度は投資金額も過去最高の水準で、1年間でおよそ8900億円が投資される見込みなのだとか(1ドル100円計算)。

ちなみに、2013年度のデータを365日分で割る単純計算を行うと、1日に平均約2.5件、約24億円が投資されていることになり、1件あたりの投資規模は平均約9.6億円になります。

また、過去5年間の投資総額はおよそ3兆円、案件数は計3308件というから驚きです。


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次に、上記のグラフは投資金額、投資案件を四半期(Q1〜Q4)に分けて表したものです。各年度とも、なぜかQ3の時期に投資が活発に行われています。※2010年度だけは例外(欧州ソブリン危機の影響?)。

2013年度Q3の投資金額・件数は過去5年間で最高の水準で、タクシー配車サービスUberの約258億円の調達や、ビックデータ企業のPalantirの約197億円の調達、企業向けにストレージサービスを提供するPure Storageの約150億円の調達など、大型案件が数字を押し上げたと見られているようです。


シードステージへの投資が活発化?


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こちらは、各投資ステージ毎に投資金額の割合を表したグラフです。スタートアップへの投資は、シードから始まり、シリーズA→B→C→D→Eの順で必要に応じて投資のステージを増やしていきます(一般的にはステージを上がる毎に投資金額はデカくなる)。また、ここではシリーズD以降をレイトステージと定義しています。

当たり前と言えば当たり前かもしれませんが、レイトステージの占める金額の比率は高く、2013年度は全体の投資金額の40%近くを占めているようです。

もうひとつ注目できるのは、近年シードステージへの投資比率が徐々に増加しており、2013年のQ3では全体の4%を占める規模になっています。(ただ、属性不明"Unattributed"の数値が2009年〜2011年の間に10%前後で存在しているため、そこの数字にシードステージの投資が分類されてたんじゃないの?という疑問も残ります…)


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また、こちらのグラフは各投資ステージ毎に案件の比率を表したもの。2009年度に7%であったシードステージへの投資案件は、2013年度には全体の29%を占めるまで増加しています。(ここでも気になるのが2009年〜2011年の間に10%前後ある属性不明レイヤーの存在で、そこの部分にシードステージの投資が分類されていたんじゃ?という疑問が再び…)


インターネット、モバイルの分野の拡大とヘルスケア、エネルギー分野の縮小


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上記のグラフは、投資金額の割合を事業分野別に表したものです。2009年度に50%近い割合をしめていたヘルスケア、エネルギー分野の投資が縮小傾向にある一方、インターネット、モバイル分野の投資が増加していることが分かります。意外にもハードウェア分野の比率は大きな変化なし。


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案件ベースでの割合を見ても、2009年に39%を占めていたヘルスケア、エネルギー分野の投資は2013年には半分近く減少。特にモバイルの分野が増加が著しく、2013年度ではおよそ5分の1を占める規模になっています。


まとめ

・シリコンバレーVCの投資金額の大きさと、案件数の多さは驚異的(過去5年間で約3兆円の投資と3308件の投資案件)。

・2013年は投資金額、案件数ともに過去5年間で最大規模。

・近年シードステージへの投資が増加。

・モバイル分野への投資が増加、ヘルスケア、エネルギー分野は一段落ついた感じ。

今回紹介した数字で注意していただきたいのは、これらのデータはVCからの投資に限った数字であるということです。つまり、前回のエントリで紹介したようなエンジェル投資家(個人の投資家)関連の数字は入っていません。

また、非公開の案件も少なからずあるので、実際の投資金額および案件数はもっと多いことになります。シリコンバレーの規模感半端ない!

更なる詳細を知りたい方は、HPから直接レポートをダウンロードしてみてください。

 

【グラフ参照元】
The Silicon Valley Tech Venture Capital Almanac

【関連エントリ】
1年半で132億円を集めたライフネット生命の調達額をシリコンバレーの企業と比較してみた

数字で見るシリコンバレーのマフィア達、Googleは15年間で2123人の人材、1167社の企業を生み出した

2013年11月18日月曜日

数字で見るシリコンバレーのマフィア達、Googleは15年間で2123人の人材、1167社の企業を生み出した



シリコンバレーでは、特定の組織に留まることなく、起業家、投資家という立場から次々に新たなプロダクトや企業を創り上げていく人材を、その出身組織の名を取って◯◯マフィアと称します。(前回のエントリでは、Twitterマフィアについてお届けしました。)

今回は、マフィアとして度々記事などに取り上げられる、Google、Facebook、PayPal、Twitterのマフィア達を紹介していきます。以下、Angel Listから各企業の卒業生数、彼らが創業した企業数のデータを引っ張ってきて、単純に比較してみました。

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1年に141人の卒業生と77社の企業を生み出すGoogle



ここでいう卒業生は、その組織に在籍していたことがあり、現在創業者、投資家、アドバイザー、役員などの形で別の組織に関わっている人を指します。また、本来なら各企業の従業員数を考慮して比較すべきなのですが、各フェーズ毎の従業員数のデータを集めることが面倒臭かった難しかったため、単純に実数で比較しました。

さて、実際に比較してみるとGoogleの卒業生、創業者数の多さに驚きます。単純に1年あたりで計算すると、年間卒業生は141人、創業社数は77社だとか。創業してから既に9年走っているFBでも、Googleの数字の半分にも達していません。(※Googleは、他の3社に比べると、創業からの年数が長いですし、従業員の母数も多いので一概にダントツとは言えない。各フェーズ毎の母数から計算して割合を出せば、FBやTwitterも同じ程度かも。)

また、4社の卒業生が創業した企業の合計は3013社!一部ファウンダーが重複してるスタートアップもありますが、15年の間で3000社以上のスタートアップをこの4社が生み出したと考えるとすごいですね。

次に気になるのが、これらの企業がどのような人物やスタートアップを生み出してきたかといった点でしょう。そこで、今回各企業が輩出した人材を、筆者が独断と偏見で3人選出し、紹介していきたいと思います。(Twitterマフィアに関しては前回のエントリをどうぞ)


 【PayPalマフィア】

 1、イーロン・マスク(Elon Musk)



イーロンは、PayPalの創業者で現在はテスラモーターズのCEO、ソーラーシティ会長、スペースXのCEO兼デザイナーを一度に務めるモンスター級の連続起業家です。当ブログでも度々取り上げてきましたので、詳しくはそれらのエントリをどうぞ→『イーロン・マスクとは?』『イーロンを理解するための3つの動画


2、ピーター・ティール(Peter Thiel)



ピーターは、Paypalの創業者で会長兼CEOであった人物。PayPalをeBayへ売却後、Clarium Capitalを設立。現在ではThe Founders Fundの運営も行なっており、これまでにZynga、AirBnB、Leap Motion、Yammer、Path、ZocDoc、Spotify、Twilio、Facebookなどへ投資を行なってきました。また、ピーターは旧社員の起業時には必ずといって良いほど投資を行っていることで有名。


3、マックス・レフチン(Max Levchin)



マックスは、Paypalの創業者でCTOだった人物。その後、Slideを創業しGoogleに$182Mでバイアウトしている連続起業家です。個人投資家としても有名で、同僚が立上げたYammer、他にもPinterest、Angel List、Mixpanel、Yelp等に出資をしています。また、Yelp(こちらも元PayPal社員が立上げた会社)の会長、Evernoteの役員としても活躍しており、最近では自らGlowというプロダクトをローンチしました。(先述したピーターはGlowにも投資をしています)


PayPalマフィアの横の繋がりは半端じゃないですね。この他にも、LinkedInのリード・ホフマン、Yelpのジュレミー・ストップルマン、Yammerのデヴィッド・サックス、YouTube創業者の3人チャド・ハーリー、スティーブ・チェン、ジャウェッド・カリームなど、そうそうたる面々がPayPalマフィアとして挙げられます。


【Googleマフィア】

1、マリッサ・メイヤー(Marissa Mayer)



マリッサは元Googleの女性初のエンジニア。まだGoogleが社員20人程度の規模でジョインし、ウェブ検索、Gmail、Googleニュースなどを担当していた経歴があります。去年Yahoo!のCEOに就任し、徹底した組織改革で市場に評価されている人物。関連エントリ→『米Yahoo!マリッサ・メイヤー就任1年目の仕事、1年間で17社買収。株価は74%上昇。』投資家としてSquare、Mintedに出資、またWalmart、Jawboneの役員も務めています。


2、ケビン・シストロン(Kevin Systrom)



ケビンは、Instagramの創業者でありCEOである人物。Googleに就職し、Gmail、Google Readerの開発に従事した後、Instagramを設立。その後、Facebookに買収されFBマフィアとして今後の活躍が期待されます。また、彼は学生時代Twitterの前身であるOdeoでインターンをしていた経歴があるのだとか。この辺の繋がりが面白いですね。


3、デニス・クロウリー(Dennis Crowley)



デニスは、DodgeballというSMSサービスを2005年にGoogleへ売却し、その後数年Googleで働いた後、2009年にFoursquareを設立した連続起業家。SquareやMetamarkets、Timhop等のスタートアップに投資もしています。


 ※Twitterを生み出したのはGoogleマフィア

Googleマフィアの一番の功績はTwitterを生み出したことかもしれません。Twitter創業者のEvやBizも元をたどればGoogleの社員ですし、現在TwitterのCEOを務めているディック・コストロ(Dick Costolo)もGoogle出身です。今のTwitterがあるのは、Googleマフィアの存在があったからだと言っても過言ではないでしょう。Googleマフィア恐るべし。


【Facebookマフィア】

1、マット・コーラー(Matt Cohler)



マットは、初期のFacebookにジョインした優秀な5人の従業員の1人として有名です。2008年に会社を離れており、その後LinkedInのジェネラル・マネージャーを経て、現在は著名VCのBenchmarkでジェネラル・マネージャーとして活躍している人物です。VCを通じてDropbox、Couch Surfing、Zendesk、Asana等のスタートアップに投資、個人でもPandoDailyやPathに出資していることに加え、自ら役員としてQuora、Couchsurfing、Instagramの経営に携わっています。


2、アダム・ダンジェロ(Adam D'Angelo)



アダムはFacebookで元CTOを務めていた人物。技術者としてニュースフィードやターゲティング広告で会社に貢献し、その後FBを離れ2009年にQuoraを創業しました。InstagramやAsana、Wealthfrontに投資をし、Asanaでは役員としてコミットしています。


3、デイヴ・モリン(Dave Morin)



デイヴは、Appleでマーケターとして働いた後、Facebookへプラットフォーム・マネージャーとしてジョインします。FBプラットフォーム、FBコネクトで成果を上げた後、2010年にPathを立ち上げました。投資家としての一面も色濃く、40社近いスタートアップへシードマネーを提供しています。加えて、Eventbriteの役員も務めているのだとか。


この他にも、Clouderaのジェフ、DailyStrengthのダグ、Pinterest創業者でありデザイナーのエヴァン、広い意味ではショーン・パーカーもFBマフィアと呼べるかもしれません。


シリコンバレーを支えるマフィア達

こう見ていくと、シリコンバレーの人材の流動性の高さ、またネットワークの強さが尋常ではないことが分かります(特に人材の流動性の高さを見ていると、もはや◯◯マフィアと分類する意味をなしてないよね…と思うレベル)。

加えて、多くの起業家が自ら会社を経営しながら(しかも未上場の段階で)、多額の資金を外部のスタートアップに投資し、新たな企業を育てるといった点に注目できます。この実態こそがシリコンバレーの強みであり、彼らがマフィアと呼ばれる所以なのです。

おまけで、Microsoft、Apple、Amazonのデータも拾ってみました。1年あたりの創業社数が多い順に並べてあります↓

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【参照元】
Move Over, PayPal Mafia. Meet The Google Mafia
Twitter mafia: 150 alumni spawn 90+ startups
Inside the DNA of the Facebook Mafia
The "Facebook Mafia" Is On The Rise In Silicon Valley
AngelList
CrunchBase

【関連エントリ】
・『Twitterマフィアの始まり、3人の創業者(Jack Dorsey, Ev Williams, Biz Stone)と150人の卒業生

 

2013年11月11日月曜日

Twitterマフィアの始まり、3人の創業者(Jack Dorsey, Ev Williams, Biz Stone)と150人の卒業生



先日(2013年11月7日)、Twitterが無事ニューヨーク証券取引所に上場し、1兆円を超える金額で評価されました。

会社にとって上場はあくまで通過点であり、ある意味スタートですが、Twitterの上場はシリコンバレーのスタートアップシーンにとって、ひとつの時代の終わりと、新たな時代のはじまりを予感させます。

今回のような大型上場(もしくはバイアウト)は多くの億万長者を生み出し、彼らの多くはその莫大な報酬を起業の資金やスタートアップへの投資に使うというのがシリコンバレーのセオリーです。(その際に多くの人が会社を離れます)

このような循環がシリコンバレーの生態系を支えており、人々は敬意を込めて彼らのことをマフィアと表現するのです(※起業や投資を通じてスタートアップ界で幅を利かせるから)。また、実際にキャピタル・ゲインを得ていない人材も、その企業の出身で実力があれば、広義の意味でマフィアに分類されます。

例えば、PayPalマフィアはLinkedIn、YouTube、Yammer、Yelp、Tesla Motorsなど、FacebookマフィアはQuora、Asana、Path、Clouderaなどの名立たる企業を世に生み出してきた強者達です。

SVBJの記事によると、Twitterは上場前の段階で既に150人以上の卒業生が投資家や起業家として活動しており、既に90社以上の会社が彼らによって立ち上げられているとか。創業7年の企業がこの数字を出すところがシリコンバレーの真髄だと言えます。

今回は、このTwitterマフィアについて、創業者を中心に紹介していきます。

創業者全員が上場前に会社から離れていったTwitter



特に注目すべきなのは、Twitterの4人の創業者は全員、上場前にTwitterを離れて(追い出されて)おり、そのうちの3人は既に別の会社を立ち上げているといった点です。(※創業者とされているのはEvan Williams, Jack Dorsey, Biz Stone, Noah Glassの4人)

Twitterは、EvanがCEOを務めるOdeoというポッドキャスティングの会社で新規プロジェクトとして生まれました。Odeoが鳴かず飛ばずのボロボロな状態で、何か次の事業を作らないと会社がヤバイ!という中、JackとNoahのアイディアをきっかけに開発されたのがTwitterです。

その後、Odeoの見込みの無さと、Twitteの可能性を確信したNoahは、自ら『これをスピンオフしてTwitterという会社をやらせてくれ!』と懇願するのですが、これをきっかけに社内で干され、最終的にクビになります。Twitterを追い出された後、Noahはシリコンバレーを離れLAに引っ越すと、2年近くTwitterもブログも更新せず、連絡が取れない状態が続いたのだとか。

その後、3人のファウンダーによる仁義なき戦いを経て、2010年にEvan、2011年にBizが同社を離れました。Jackは会長として籍を残すものの、実質肩書だけのお飾り状態になり、自身が立上げた別の会社(Square)に注力していくことになります。※今回は割愛しましたが、仁義なき戦いの内容を詳しく知りたい方は書籍『Hatching Twitter』をどうぞ。

このような過程で上場前にTwitterを事実上離れた創業者達ですが、そこで終わらないのがTwitterマフィアたる所以です。

 ジャック・ドーシー(Jack Dorsey)




まずは、ジャック・ドーシー(Jack Dorsey)。彼はモバイル決済サービスSquareの創業者でありCEOです。Squareは3000億円以上(2013年11月現在)で評価されており、2014年の上場も噂されています。また、SquareのCEO以外にも、Twitterの会長、Ustreamのアドバイザー、Fancyの役員も務めています。

投資面では、Flipboard、Kickstarter、Instagram、Fancy、Foursquare、Jelly HQ(※Bizの会社)など今をきらめくスタートアップに出資しており、シリコンバレーのスタートアップシーンに影響を与え続けている人物の1人です。そのカリスマ性ゆえに次なるジョブズと言われているとかいないとか。Twitterの持ち株は5%前後。

 エヴァン・ウィリアムズ(Evan Williams)



次に、エヴァン・ウィリアムス(Evan Williams)。彼は過去にBloggerをGoogleにバイアウトした後、Twitterの前身であるOdeoを創業。2010年にTwitterのCEOの退いてから、ブログのパブリッシングプラットフォームのMediumを設立しています。

投資面ではMilk、Everfi、Blippy Social Commerceなどに投資。多くの修羅場をくぐってきた経営者だけあり、その過程で身につけてきた経営手腕には光るものがあります(特に窮地に立たされた時の身の振り方)。バイアウトを経て、シリコンバレーの幅広いコネクションと莫大な資産を手に入れた人物です。Twitterの持ち株は12%と多め。

 ビズ・ストーン(Biz Stone)



最後は、ビズ・ストーン(Biz Stone)。彼はBlogger時代からEvanと付き合いのある人物で、Mediumの開発にも一役買った人物。2013年にJack DorseyやSV Angelから資金を集め、Jelly HQというプロダクトの開発を始めます(詳細は不明)。彼は、Fluther、Branchのアドバイザー、DonorsChoose.orgのボードメンバーでもあります。また、投資面ではSquare、Message Bus、Intercomに出資しており、Spark Capitalのアドバイザーも務めています。Twitter持ち株は退職時にほとんど売り払ってしまったため1%前後。


こう並べてみると、BizがJackのSquareに投資、EvのMediumの開発に関与していることや、JackがBizのJelly HQに初期投資をしていることから創業者の横の繋がりがめちゃくちゃ強いことが分かります。

また横の繋がりのみならず、シリコンバレーのスタートアップシーンに起業家、投資家という2つの側面から多大な影響を与え続けている、まさにマフィアと呼ぶに相応しい創業者達なのです。


投資界のTwitteマフィア



創業者以外にも、上場までに150人以上の卒業生と90社以上のスタートアップを生み出してきたTwitter。特に著名VCで働く人材には目を見張るものがあるようです。

以下、Twitter出身で著名VCのパートナーを務めるマフィア達。

・Josh Elman→Greylock Partners(ファンド規模総額約2500億円、主な投資先はLinkedIn、Facebook、AirBnB、Dropboxなど)

・Michel Abbott→KPCB(ファンド規模総額約1430億円、主な投資先はAmazon、Google、Twitter、Path、Spotifyなど)

・Ryan Sarver→Redpoint Ventures(ファンド規模総額約1850億円、主な投資先Gogobot、Path、Zendesk、Twilioなど)

・Anamitra Banerji→Foundation Capital(ファンド規模総額約282億円、主な投資先Pocket、DogVacay、Lending Clubなど)

彼らは、所属するVCを通じてこれまでAngel List、Cloudera、CodeAcademy、Pure Storageなどに投資を行い、新たなイケてるサービスの発展に貢献してきました。


このように、創業者、従業員ともにシリコンバレーの原動力になっているTwitterの卒業生達。今回のIPOによるキャピタル・ゲインを機にその数は増えていくでしょう。今後彼らがTwitterマフィアとしてシリコンバレーでどのように活躍してくれるのかに注目です。

その他、Twitterマフィア予備軍のスタートアップと人材はコチラからウォッチできます。

 

【参照元】
Twitter mafia: 150 alumni spawn 90+ startups
Angel List/Twitter
An Interview With Twitter's Forgotten Founder, Noah Glass
The “Twitter Mafia” Poised to be Silicon Valley’s Next Great Network

2013年11月6日水曜日

【保存版】海外Techメディア一覧!世界のテックシーンを把握するのにオススメのメディア、全部集めました!



世界のITビジネスまたプロダクト関連の情報を、いち早く海外メディアから仕入れたい!けど、どんなメディアがあるのか分からないという人、結構多いのではないでしょうか。

今回はそんな人達のためのエントリです!(今すぐブックマークの準備を!)

ビジネスやプロダクトに関する洞察力を養うにあたって、普段からどんな情報のシャワーを浴びているかは大事な要素です。1人でも多くの日本人に、世界の動向に目を向けてもらい、良質な情報に触れる頻度を増やすことで、世界基準の洞察力を身につけて欲しい、という願いを込めて今回のエントリをお届けします。(僕が言うのもおこがましいですが…)

海外webメディアの特徴



今回は、英語媒体のwebメディアに絞ってご紹介します。

英語媒体のwebメディアの市場規模は日本に比べて大きいため(※十数億円を調達している会社はザラ)、その数の多さも半端じゃありません。そのため、どんなメディアがあって、どれを読めばいいのか分からないという人が多いのだと思います。

海外メディアは大きく分けて以下のような3つのタイプがあります。

1、総合デパート型
2、セレクトショップ型
3、頑固オヤジのラーメン屋型

1の総合デパート型は、日本でもお馴染みのTech CrunchやCNETのような大手メディアで、資金・人材のリソースが豊富なため幅広いジャンルの一次情報、分析、インフォグラフ等のコンテンツを発信することが可能です。また、その資金力からカンファレンス(例:TC DisruptやMobileBeatなど)を頻繁に開催できるため、安定的に魅力的なコンテンツを確保することができます。

2のセレクトショップ型は、リソースが少ないため、大手メディアの一次情報を材料に、料理(分析・考察)をして記事を提供するといったタイプ。もちろん、独自ルートの一次情報も発信していますが、頻度では大手メディアに劣ります。このタイプは、大手に比べそのメディアの編集方針(または記者の嗜好)が出やすいのが特徴です。

3の頑固オヤジのラーメン屋型は、EngadgetやPCMag、Geek.comのような特定の専門分野に特化したタイプです。特定の分野に命をかけてリソースを投下しているので、総合デパート型からは入手できない速報や、試してみた系の情報を数多く提供してくれます。個人的には毎日読まないけど、たまにチェックするのがこの手のメディアです。

このようなメディアの中でも、ライターによってそれぞれ特徴があるので、自分の感覚に合うメディアを見つけて、RSSにブチ込むなり、Twitterのリストを作成するなりして、定期的にチェックしてみてください。

とりあえず、全てのメディアをブチ込んでみて、読まない、つまらないと感じるものは随時外していくのが良いかもしれません。

また、大手メディアは自社でブラウジングのアプリを提供してる場合が多いので、そこから定期的にチェックするのもありです。それと、各メディア週末に「今週の注目記事トップ10」系のまとめが出るので、忙しい方はそれだけチェックすることをおすすめします。

前置きが長くなりました、以下筆者がおすすめする10の海外メディアになります。


オススメする10のメディア


1、TechCrunch



言わずと知れたTech系メディアの顔。2005年に創設され2010年にはAOLに買収されています。資金、人材、コネクションといったリソース面ではピカイチの組織だけあって、供給してくれる情報の質・量ともに文句なしです。
Tech Crunch Japanから日本語訳された記事を読むことができますが、全ての情報が翻訳されるわけではないので、本家のサイトをウォッチすることをおすすめします。


2、Pando Daily



元Tech Crunchの売れっ子記者サラ・レイシー(Sarah Lacy)氏が独立して、2012年に立上げたメディア。2013年5月には個人投資家とVCから約3億円を調達しました。彼女自身、長年シリコンバレーのスタートアップ界隈で活動してきた背景もあり、PDは西海岸のスタートアップに特化して、ツッコンだところの情報をガンガン提供してくれます。動画も人気コンテンツなので、是非チェックしてみてください。


3、VentureBeat



VBはベンチャーキャピタルに関連した情報を発信するメディアとして、2006年にスタートしました。現在は幅広いジャンルの記事を配信していますが、今でもなお資金調達や買収、IPO関係の情報に感度が高いメディアです。創設者はサンノゼ・マーキュリー紙(地方紙)で働いていたマット・マーシャル(Matt Marshal)氏。


4、AllThingsD




Wall Street JournalMarket Watchを発行するダウ・ジョーンズ傘下のメディア。取材に関するノウハウやコネを持ったダウ・ジョーンズのリソースを取材にフル活用しているためか、マーケット寄りの情報や、速報などに強いイメージがあります。要チェックです。


5、Tech in Asia



成長著しいアジア市場の情報を英語で発信してくれる貴重なメディアです。中国、台湾、インドネシア、タイ、シンガポール、ベトナム、フィリピンに記者がおり、現地のホットな情報をいち早く発信してくれます。
上記の記者が在住している地域以外にも、日本、韓国、インド、マレーシア、パキスタンにカテゴリ分けされ、随時情報を供給してくれるところが嬉しい。
また、姉妹メディアとしてGame in Asiaインドネシア専門のTAも運用しているようです。


6、Business Insider



前身は2007年に開始されたSilicon Valley Insiderというメディアで、現在はシリコンバレーに限らず、米国のスタートアップ、Techビジネスの記事を届けてくれます。分析・考察系の記事に定評あり。投資家のマーク・アンドリーセン(Marc Andreessen)やAmazonのCEOジェフ・ベゾスなど業界著名人から投資を受けており、これまでで合計約18億円を調達しています。


7、Mashable



月間1300万PVを誇るTechメディアの巨人Mashable。独立系のメディアとしては1番規模が大きく、ABC News、CNN、Forbes、Metro、USA Today、Yahoo! Newsなどに記事を供給している知名度の高いメディアです。TC同様、更新頻度・記事の質ともに申し分ないのでウォッチしておいて損はありません。


8、The Next Web



オランダのルクセンブルクに本社を置き、世界中のテクノロジーを紹介しているメディアです。欧州地方の動向も入手できるのでおすすめ。自らTNW Labsを設立し、Twitter CounterPaydroといったプロダクトをローンチしている稀有なメディアです。大規模なカンファレンスも積極的に開催しています。


 9、Entrepreneur



海外の起業家御用達の雑誌Entrepreneur Magazineを発行している企業が運営するwebメディア。教訓やまとめ系(雑誌の記事風なコンテンツ)が多く勉強になります。


10、GigaOM



2006年にOm Malikのブログから始まったメディアで、現在では月間550万PVを超える規模に成長しました。paidContentやTheAppleBlog等のブログを買収してスケールしてきたことで知られています。また、メディア以外にGigaOM Researchという調査事業を行なっています。読みやすい文量で旬の情報を提供してくれるので個人的に気に入っています。


おまけ:Hacker News



忘れてはいけないのがHacker News。上記してきたような、記者が情報を配信する形のメディアではないのですが、情報収集をするにあたり、最もウォッチする価値のあるサイトです。

HNは、2007年にY Combinatorの創業者ポール・グラハムにより開発されたサイトで、投稿された記事をユーザーの投票によってランク付けるといったRadditのようなシステムで動いています。

特筆すべきなのはYC生が愛用しているサイトであること!つまり、本場のハッカーが注目している記事をキュレーションしてくれるイケてるサイトなのです。
他にも、YC生が求人を出したり、スタートアップ(起業・経営・開発)に関するQ&Aを行う機能もあります。


その他、海外のwebメディア一覧

以下、その他の海外メディアを大雑把にまとめてみました。

【定番のメディア】
CNET
The Verge
WIRED
Ars Technica 
Tech Cocktail  ←ザッポスのトニー・シェイが約2.5億円を投資


【中小規模+老舗】
Best of Technology
Techonomy
Boy Genius Report
GeekWire
Read Write Web
Vator News
Silicontap
Sillivon Valley Business Journal 


【大手メディアのコンテンツ+研究機関系】
WSJ Tech
Forbes Tech
NYT Tech
HUFF POST Tech
MIT Tech Review


【ギーク系】
BoingBoing
Tech Radar
Geek.com
Popular Mechanics
Get Elastic


【ガジェット系】
PC Magazine
Gizmodo
PC World
Engadge
Maximum PC
Extreme Tech
Apple Insider


【日本発のメディア】
The Bridge

以上。

上記以外にもオススメの海外メディアがあるよ!という方は、FBページTwitterから教えてくださると嬉しいです!随時、追加していきます。

 
【関連エントリ】

2013年11月1日金曜日

19歳で投資家、アレックス・バナヤン(Alex Banayan)が史上最年少の大学生キャピタリストになれた理由



シリコンバレーの起業家は、若くして頭角を現すタイプが多く、早いと10代で事業を興し結果を残します。当ブログでも、ニックブライアンなどの事例を取り上げてきました。

そして、若年化の波は起業家に留まることなく、投資家の領域にも打ち寄せます。
今回は19歳でベンチャーキャピタリストになり、現在も大学生活を続けながら投資家として活動しているアレックス・バナヤン(Alex Banayan)氏についてご紹介します。

史上最年少19歳の大学生投資家



バナヤンは、LAに位置する南カリフォルニア大学へ通う20歳の大学生で、今から約1年前(当時19歳)から、Justin.TVTwichなどに出資をしているシリコンバレーのVCオルソップ・ルイ(Alsop Louie)でアソシエイトとして働いています。ちなみにオルソップのファンド規模は約200億円で中々大きいVCだと言えます。

彼の仕事はLAでイケてるスタートアップを発掘することで、学生起業家を中心にコンタクトを取っているようですが、未だに投資を決定できるようなスタートアップに出会えていないのだとか。肩書は投資家ですが、実際に資金を出資した経験はまだないみたいです。


きっかけは女子大生キャピタリストとの出会い



バナヤンがVCにジョインするきっかけになったのは、当時20歳でオルソップに勤務するスタンフォードの女子大生Ernestine Fu氏との出会いです。(ちなみに、オルソップはバナヤン以外にMITやスタンフォードなどの名門大学の学生を数名雇っています)

大学へ入学後、ビル・ゲイツやザッカーバーグのような偉人達が、どのように考えてぶっ飛んだキャリアを選択し、実現していったのかに興味を持ったバナヤンは、その答えを見つけるべく文献を読みあさるのですが、納得できる文献を見つけることができず、じゃあ自分でインタビューして本を書いちゃおう!と執筆活動を開始します。(ちなみに、アレックスはこの書籍に関して米国出版社クラウンビジネスと契約した最年少の作家でもあります)

その執筆活動の途中でErnestine Fuの記事に出会います。20歳の女性投資家に興味を持ったバナヤンは、早速メールでコンタクトを取り彼女とランチをする約束にこぎつけたのです。

もともと、VCで働くことなど(この歳で働けるとも)考えたこともなかった彼ですが、ランチ中にFuから出された『ベンチャーキャピタルで働くことに興味ある?』という質問に対して、こんな機会2度とない!という直感から即座に「Yes」と答えてしまいます。その2週間後にVCのファウンダーとの面接が入り、Fuの推薦も手伝って史上最年少19歳の投資家が誕生しました。ちょっとした出会いから人生変わりますね。

バナヤン自身は、投資家になることはゴールではないが、次のビル・ゲイツやザッカーバーグを発掘することは何かに取り憑かれたように没頭できるし、自身の執筆活動にも活かせると捉えていようで、今は謙虚に取り組んでいきたいのだとか。


学生が投資家である意味



↑LAとシリコンバレーを行き来するバナヤンの生活

10代〜20歳の人間に投資家という仕事が務まるのかという点は賛否両論だと思います。金融の知識も乏しい上に、ビジネスやマネジメント経験のない人間に出資などして欲しくないといった意見はごもっともですし、他にもネガティブな要素を挙げればきりがないでしょう。

一方、ポジティブな要素もいくつか考えられます。中でも、
・若い世代との人脈
・コンシューマー目線で投資案件を見つける嗅覚
という点は高く評価できるのではないでしょうか。

まず、若い世代への人脈ですが、ご存知の通りGoogle、Facebook、Yahoo!をはじめ学生が生み出してヒットしたプロダクトは、シリコンバレーにごまんとあります。

その金の卵を常に探している投資家達ですが、彼らがいちから学生の世代とコネクションを作ることはそう簡単ではありません。彼らが大学に入り込める時間や領域はほんの一部ですし、イケてる学生が向こうから出向いてくれる保証もありません。(シリコンバレーには投資家もごまんといるので常に激しい競争に晒されているわけです)

なら、優秀な起業家が生まれそうなor生まれてきた大学へ通う学生を捕まえて、代わりに人脈を構築してもらう!というのが、今回オルソップが取っている戦略であり、ある意味合理的なのかもしれません。また、世代が近いという感覚は大切で、投資案件や相談事をするにしても、上の世代より同世代の方が感覚的に腹を割って話しやすいというのはありそうです。(まあ、人それぞれですが…)

次に、投資案件を見つける嗅覚ですが、普段からテクノロジーに触れている世代が、いちユーザー視点で可能性のあるプロダクトを探せるというのは学生のアドバンテージだと思います。

特にコンシューマー向けのプロダクトに限っては、同世代が普段どんなサービスを利用しているか+利用したきっかけは何か、加えて自分がどんなサービスを利用したいと感じるかを把握していることは武器になりますし、同様のことをおっさん世代が行うのは難しいのも事実です。

余談ですが、ふと堀江貴文氏が、
『異業種交流会に行くくらいなら合コン行った方がいいよ。だって、消費者はその女の子たちで、結局、1番最初に市場を引っ張っていく。40才とか50才のおじさんが市場を引っ張ることってないから。彼らの話を聞いたって何の参考にもならないよ。』
とどこかで言及していたのを思い出しました。物理的にユーザーの近くにいることって結構重要なのかも。

オルソップは(たぶん)上記ような考えで、学生の投資家をアソシエイトとして採用しているのではないでしょうか。

実際にErnestine Fuが、スタンフォードのPh.D.(博士課程)が設立したスタートアップのQwhisperへ約1.3億円のシード投資を成立させたという事例が出てきています。

今後も学生投資家の活躍から目が離せません。

最後に、バナヤンの書籍出版後のプランは起業だそうです。人間は任された立場や環境で大きく成長できるものだと思うので、若くして投資家という立場で学んだ経験を活かし、彼の納得のいく人生を歩んでいって欲しいものです。

 

【参照元】
How 19-Year-Old Alex Banayan Became The World's Youngest
Introducing: The kid VC
Meet America’s youngest venture capitalist, Alex Banayan
Ernestine Fu: Class Act
A Day In The Life Of 20-Year-Old VC Ernestine Fu