最近、よく記事で目にするビットコイン(Bit Coin)。ただ、素人の自分にはどの記事を読んでも、イマイチよく掴めない部分があったので、今回色々考えてまとめてみることにしました。
「世界共通の仮想通貨!」「国の通貨発行権を脅かす?」などと騒がれているビットコインですが、前提として通貨の仕組みを把握することで、ビットコインの理解をぐっと深めることができると思います。
前置きが長くなりますが、騙されたと思ってお付き合いください。(※んなもん知ってるよ、という方は最初の部分は飛ばしていただいて結構です。)
通貨の仕組み
まず、お金という概念についておさらいしていきます。ご存知の通り、皆さんが普段から普段から大切にしている1万円札や、500円玉そのものには価値がありません。1万円はただの紙切れですし、500円はただの銅のかたまりです。
では、なぜ多くの人がただの紙切れや銅のかたまりをそこまで信用できるのでしょうか。それは、紙幣を貨幣を発行している中央銀行ひいては国を信用しているからなのです。政府のマネジメント能力が低い国の通貨は信用できないので安く評価されますし(極論、国が倒れたらただの紙切れなので)、マネジメント能力が優れている国の通貨は、一般的には高く評価されます。
ここで抑えておきたいことは、①お金は「それに価値があるという共通の思い込み」があってはじめて成り立つこと。②現代社会では、人々は無意識のうちに貨幣価値の裏付けとして「国を信用している」ということです。
ビットコインが掴めない理由
国が人々から信用を得る以前は、希少価値のある(採掘できる総量に限界がある)「金(ゴールド)」を信用の担保としていました。いわゆる兌換紙幣(同額の金貨に交換することを約束した紙幣)という仕組みです。
人々からしたら、紙切れを持っていけば、いつでも希少価値のある金と交換できるわけですから、「まあ、この紙に1万円の価値があるっぽいよね」と信用できたわけです。
※先述したように、現代では国の信用と引き換えに通貨を発行する、不換紙幣(金貨との交換を保証しない紙幣)が流通しています。
一方で、ビットコインのシステムには国や政府といった通貨の信用を裏付けする役割を果たす機関が存在しません。
通貨を使用する人々が、国のような信用する先を持たないという状況下で、一体ビットコインはどのように信用を担保しているのでしょうか?(※電子マネーは流通元の会社が信用を担保しているわけですが、ビットコインではそのような機関は存在しません。そもそもビットコイン自体は会社ではなく、単なる数列なので)
なぜ人々はビットコインを貨幣として信用しているのか?この部分がぼやっとしていると、ビットコインが掴みどころない存在に感じられます。(少なくとも筆者はそうでした…)
もともとオタク達の勲章であったビットコイン
ビットコインの構想は、2008年にサトシ・ナカモト(中本哲史)という正体不明の人物の論文により発表され、その後世界中のハッカーやアナーキーなオタク達により作り上げられました。(政府を介さない通貨の誕生というコンセプトがハッカーにささったみたいです)
ビットコインの特徴は、P2P(コンピュータが専用のサーバーを介さないで、接続されたコンピュータ同士で直接やりとりを行うネットワークシステム)で取引をされている点と、金や銀のような鉱物と同じく、採掘(発行)できる総量に限界があるという点です。
まず、P2Pの取引ですが、この形態を取ることにより、ビットコインは銀行などの仲介機関を通さず取引を行うことができるので、決済手数料をめちゃくちゃ安く抑えることが可能になります。国際送金手数料や為替手数料の削減に一役買うと騒がれているのはこのような特徴があるからです。
また、先述したようにビットコインは無限に発行されるわけではありません。ビットコインを手に入れる方法は2つあり、1つ目は全世界50以上ある両替所で円やドルといったリアル通貨と交換する方法。2つ目は、新たなビットコインを採掘(mining)と呼ばれる作業(計算化学的に難しい問題を解く行為)を通じて自ら入手する方法です。
金や銀と同様に採掘できる総量には制限があり、最高でも2100万ビットコインしか掘り起こせない仕組みになっています。なお、2013年11月時点では約1200万枚のビットコインが発掘されています。2020年には90%、2040年までには100%が採掘される予想。
また、採掘作業が進むにつれて、新しい金を掘るために地中深くまで採掘作業を行わなくてはならないのと同様に、ビットコインの残量が少なくなるにつれて発掘のハードルが上がるシステムになっています。
ここで確認しておきたいのは、初期のビットコインは、サトシ・ナカモトの構想に共感したアナーキーなハッカーやオタク達が発掘作業に参加し、その労力の見返りとして受け取っていた対価がビットコインであったということです。いわば、ビットコインは、オタク達の勲章であり、ハッカー達が構築したネットワークは破られないとの信頼のもとに成り立っていた内輪のアングラマネーだったのです。
このようにごく一部のオタクユーザーが使用するアングラマネーであったビットコインですが、物珍しさと利便性に惹かれて徐々にオタク以外の人間がビットコインに注目し始め、その期待が加熱し、現在のような状況に至ります。(※もちろん、個人投機家や機関投資家がこの儲け話しを見逃すわけもなく、ネットやメディアを通じてビットコインの高騰を煽る煽る…)
徐々に多くの人がメディアに煽られ、「ビットコインってなんか価値がありそうだよね…」と思い込みはじめたのが現在の状況です。先述したように共通認識として「価値がある」と思い込んでいる(信用している)人たちの間では、ビットコインは相応の通貨として機能します。
大事なことなので、もう一度言いますと、ハッカー達が手間をかけて構築したネットワークは破られないとの信用のもと、一部のオタクの間で流通したアングラマネーがビットコインです。それを、オタク以外の人たちに「なんとなく」価値がありそうと思い込ませたところがビットコインのすごいところだといえます。
ビットコインの現状
さて、そんなこんなで盛り上がりを見せているビットコインですが、現状はどんな感じなんでしょうか。まとめてみました。
【店舗での決済利用】
ビットコインの盛り上がりに伴って、じわじわとビットコイン決済を導入する企業が増えてきました。WordPressや中国バイドゥ、リアル店舗の飲食店もQRコードを利用したビットコイン決済を導入しはじめています。
【犯罪】
ビットコインは高い匿名性という特徴(誰がいくら保有しているのか、またどのような取引が行われているのかをトラッキングできない)を背景に、麻薬の送金やマネーロンダリングに利用されるケースも多いのだとか。最近摘発されましたが、ビットコインでの取引を前提にして、麻薬取引や殺人依頼を行う「シルクロード」というサイトが有名です。
米国政府はこのような事態を当然問題視しており、取引所に対して利用者の個人情報登録を義務付け、監督体制を強化していきたいとのこと。ただ、規制が強化されることで、トラッキングコストが発生し、手数料がほぼかからないというビットコインの旨味が薄れる懸念もあります。
【ビットコインの取引所】
ビットコインの取引所は世界に50以上あります。日本の渋谷にある「Mt. Gox」では全体の取引の6割以上が行われており、世界最大規模なのだとか。その他は、中国最大の「BTC Chine」が有名。(中国は資本規制が厳しいため、多くのチャイナマネーがビットコインに流れているらしいです)
【類似仮想通貨】
ビットコインの盛り上がりに乗っかって、ライトコイン(Litecoin)、アルファコイン(Alphacoin)、ファストコイン(Fastcoin)のような類似仮想通貨も登場しているみたい。
【発掘作業】
残り約900万ビットコインの採掘を巡り、熾烈な発掘競争が行われているようです。先述したように、ビットコインの埋蔵量が少なくなればなるほど、発掘作業が難しくなるように設定されています。それに伴い、企業は高スペックなコンピュータの導入や、膨大な電力の支払いを余儀なくされ、それらのコストに耐えきれなくなった企業が倒産するケースがちらほら出てきているのだとか。
【ウィンクルボス兄弟がにやり】
Facebookの創業者マーク・ザッカーバーグに対して訴訟を起こしたことで有名な、ウィンクルボス兄弟は2012年8月頃、まだビットコインの価格が10ドル以下の時に約1100万ドル相当のビットコインを購入しており、最近の値上がりに笑いが止まらない模様。
ビットコインは通貨になれるのか?
最後に、ビットコインは円やドルのような主要通貨としてのポディションを確立できるのかといった点が気になるところです。
これに関しては、かなり難しいのではないかというのが筆者の意見です。
なぜなら、ビットコインには流通量を調整する政府(ひいては中央銀行)のような機関が存在しないからです。通常、政府は自国の通貨を適正な価格に保つために、金融政策を通じて自国通貨の流通量(価格)をコントロールしようとしますが、ビットコインはそのような調整を行うことができません。
この点に関しては、経済ブロガーのYoshi Noguchiさんが述べていた例が分かりやすかったので引用。
『誰もがビットコインを用いる社会で、商売を始めることを考えよう。100BTCを借りてきて、まずコーヒー豆を仕入れる。トラックで運んできて、焙煎して袋詰めして、それらしい売り文句をつけてスーパーや喫茶店に販売するまでの間に、ビットコインが高騰してしまった。商品と引き換えに得られるはずだった300BTCが、150BTCに減ってしまったのだ。これは困る。社員にも100BTCの給料を支払う約束で、事前の目論見と違って大赤字である。こんなにビットコインが変動してしまっては、商売しにくい。
もちろん貸し手にとっても面倒だ。コーヒー商社には将来がありそうだと、一年の約束で100BTCを貸したら、その間にビットコインのバブルが崩壊してしまった。予定通り110BTCは返ってきたものの、それで買える米の量は半分になってしまった。事前の目論見と違って大失敗である。こんなにビットコインが変動してしまっては、貸しにくい』(引用元:なぜビットコインは通貨になれなかったのか)
流通量をコントロールできない通貨は、価格の乱高下に対処できません。価値が変動的な通貨は投機には適していても、商用目的で利用するには不便過ぎるのです。よって、この問題が対処されない限り、ビットコインが通貨としてのポディションを確保することはないように思います。
まだまだ課題が多いビットコインですが、おもしろい存在でもあるので、今後も見守っていきたいところです。
【参照元】
・国の通貨発行権を脅かす? 世界共通の「ビットコイン」
・仮想通貨ビットコイン 便利さ、記者も使って実感
・ビットコインについて素人が思う疑問
・なぜビットコインは通貨になれなかったのか
・仮想通貨人気でビットコイン類似通貨が次々登場
・ビットコインを推奨するウィンクルボス兄弟の発言を聞いておいた方が良い2つの理由。
・Bitcoinのマイニング施設に建物全体を使った水冷システムが登場
・Bitcoin passes $1,000 mark for the first time, up over 62% in a week
・ビットコインが500ドルに乗せたので、これを機会に整理してみる