2013年4月30日火曜日

1000万ユーザーを突破したPathはこう収益化する、デイブ・モリンはアジアを見習った




先日、クローズドSNSサービスPathのユーザー数が1000万を突破したと、CEOデイブ・モリン(Dave Morin)がツイートを通じて発表しました


Pathがローンチされたのは、2010年11月なので2年と半年で1000万ユーザーを獲得したことになります。凄いですねー!

そこで気になるのが、Pathはどのようにマネタイズするの?という部分です。

Pathの最大の売りは洗練されたデザインなので、広告モデルはまず考えられません。

この件に関して、CEOのデイブ・モリンは大きく分けて3つの柱で考えているとCNETの記事にて言及しています。

 1、写真フィルター


SNSの主要用途のひとつは写真の共有です。
少しでも写真を綺麗に見せるために、Pathは写真加工のフィルターを1つ99セントで販売しています。

これは、真新しい手法ではなく、既にカメラアプリの収益化で一般的に使用されているものです。

ただ、合計で4120万ドルの資金を調達しているPathが、写真フィルターだけで投資に見合う収益を上げることは不可能でしょう。

2、ステッカー


次に、メッセージ機能で使用できるステッカーの販売です。

Pathは、ステッカーを1パック1.99ドルで販売しており、ステッカーの売上は数週間で写真フィルターの売上1年分を上回ったのだとか。

これは、LINEやCubieに代表されるアジアで成功したメッセージアプリのマネタイズ手法を見習ったものであると米メディアTNWは推測しています

3、サブスクリプション(定期課金モデル)


そして、2013年の後半からサブスクリプションモデルを導入すると発表しました。

これは、EvernoteやSpotifyのように、一部のユーザー向けにプレミアムサービスを提供し、定期的に課金していく手法です。

ただ現時点では、プレミアムサービスの内容や料金体制については言及されていません。

今後のPathに注目


スケールしてもマネタイズが難しいと評判のSNS分野で、Pathがどう結果を残すのか注目です。

ちなみに、PathはFacebookの初期メンバーで、Facebook PlatformやFacebook Connectを開発したデイブ・モリンと、ショーン・パーカーと共にNapsterを立ち上げたショーン・ファニング(Shawn Fanning)によって立ち上げられた、最も西海岸で注目されているスタートアップのひとつです。

日本への進出も積極的で、日本でTwitterやKiipなどのローカライズを支援しているデジタルガレージからも資金を調達しています。

デイブ・モリンは、近頃のユーザー数の増加について、『最近では高校生や大学生が増えている、FacebookのようなオープンSNSに対するソーシャル疲れが原因だ。彼らは保護者がいない場所を欲している。』と言及しました。

注目されるクローズドSNSの分野で成功事例を作って欲しいですね。

2013年4月27日土曜日

米国のソーシャルゲームはカジノへ、GREEの米国戦略から考える




先日、米メディアのGames Beatにて、GREE International CEO青柳直樹氏の米国戦略に関するロングインタビュー"Gree searches for the billion-dollar game from its swanky S.F. headquarters (interview)"が掲載されました。

(Games Beat記事より)

内容はこんな感じ。

①サンフランシスコのヘッドクォーターでは新たなサードパーティーの獲得を目的に1000万ドル規模の投資を行なっていること。(ちなみにSFオフィスには450名の従業員がいるとか、積極的に買収を仕掛けているだけあって意外といるのね)


②ソーシャルゲームプラットフォームOpen Feintを閉鎖したこと。


③DeNA、Electronic、Supercell、Rovio、Zynga、GungHoといったライバルに負けぬよう、エンジニアの獲得に注力していくこと


④カジュアル層からミッドコア、ハードコア層向けのゲームを充実させていくこと(タブレットが主戦場になる)


⑤海外戦略はアジアよりもまず米国西海岸を優先させること。(でもちゃんと韓国での開発も頑張っている)


⑥AppleやGoogle、カカオといったプラットフォーマーは、サードパーティーからマージンを30%ほど徴収するが、iモードを成功させたNTTドコモは10〜15%と低い徴収率であったため、サードパーティーが育ったこと。


⑦遅くとも来年までに年間で10億ドルの売上を計上するゲームタイトルを見つけること。


⑧キャラクターグッズやおもちゃなどでのマネタイズも考えていること。(クリノッペとか)


⑨マーケットの拡大が見込めるAndroidのタブレット端末向けの開発を優先すること。(ハードコア層向け)


⑩ソーシャルカジノゲームの分野にもいち早く参入しており、Android版の"Jackpot Slots"はGoogle Playでトップ20にランクインしていること。


⑪カジノ分野で他者にはない面白いマネタイズの技術があること。


⑫小さなゲームメーカーも支援していくこと。(米Kabamが日本のゲームメーカーの海外支援を目的に5000万ドル規模のファンドを設立した例などを挙げる)


⑬今年は米国市場でモバイルのゲームが熱くなること。



個人的に興味深いのがカジノゲームへの参入です。

日本のソーシャルゲーム業界は、パチンコ市場を食って成長してきた一面もあるので、米国でギャンブルを楽しむ層=カジノ市場を攻めるのは正解だと思います。(Zyngaのカジノシフトなどの例もありますし、カジノジャンキーも多いです)

また、日本のソーシャルゲーム勢が得意とするカードゲーム方式は、米国では日本のようにウケないという話を制作側の人間から聞きます。

というのも、米国でカード方式のソーシャルゲームを好むのは、紙のカードゲームをやり込んでいるオタク層らしく、中々一般層へスケールしていかないのが現状のようです。

なので、今後は米国に多数存在するハードコアゲーマー層にアプローチしたいみたいですが、やっぱり米国でガッツリ稼ぎたいならカジノ参入が手っ取り早いと思うなー。

2013年4月26日金曜日

19歳で始めたKiipが累計1500万ドルを調達、ブライアン・ウォンが教えてくれる大切なこと




先日、光栄なことに社会派おちゃらけブロガー、ちきりんさんのブログに本ブログがちょこっと掲載されました。

掲載されたのは、史上最年少の15歳でVCから資金を調達し、17歳で米Yahooに事業を売却したスーパー高校生ニック・ダロイジオ氏のエントリです。

ほんと、素晴らしいプロダクトの前では年齢なんて関係ないんですよ。

さて、今回も『これって本当にティーンエイジャー?』シリーズをお届けします。

今回取り上げるのは、2010年に19歳の若さでアチーブメント型広告事業Kiipを立ち上げた、ブライアン・ウォン(Brian Wong)氏です。


ニック・ダロイジオ氏が17歳で史上最年少記録を更新する前、彼が19歳で最も若い資金調達者として話題になっていました。

彼は、中国系カナダ人としてバンクーバーに生まれます。
2回もの飛び級を経て、14歳で高校を卒業、18歳でUniversity of British Columbiaを卒業する神童です。

卒業後は、アメリカ・カリフォルニア州に移り、ソーシャルニュースサイトを運営するDiggで働き始めるのですが、1年後にレイオフの一環で解雇されてしまいます。

これを機会に彼は東南アジアを旅し、その期間にKiipの事業を思い付いたそうです。
その後、当時史上最年少の19歳で、True Venturesやエンジェル投資家から計30万ドルの資金調達に成功。続くシリーズで、Verizon Venturesや日本のデジタルガレージ(Digital Garage)から総額1500万ドルもの金額を調達しました。




Kiipは、ユーザーがゲームをクリアしたタイミングに、実店舗で商品と交換できるクーポンを発行するO2O型の広告技術を提供しています。

Kiipは現在、900のアプリとパートナーシップを結んでおり、ディズニー、マクドナルド、ペプシコ、ソニーミュージック、など40を超えるブランドと取引があるようです。

日本でも、出資元のデジタルガレージの協力でローソンと提携し、いくつかのキャンペーンを実施していました。

デジタルガレージはKiipの魅力を以下のように説明しています。

『ゲームやその他のアプリを起動中に、ゲームのステージをクリアする、レベルが上がる、ハイスコアを出す、ポイント達成等、アプリ側で規定した目標値に到達した際(=「アチーブメントモーメント」)、ユーザーには達成感や幸福感が芽生えます。Kiipは、そのモチベーションの高いタイミングに、ユーザーメリットのあるクーポンやサンプル、プレミアムコンテンツ等の広告を露出させる事で、広告主とユーザーの間に深いエンゲージメントを醸成する事が可能となり、質の高いエモーショナルマーケティングを実現できます。共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営する株式会社ロイヤリティ マーケティングによるテストマーケティング(実施済)においては、CTR12%(他社アドネットワークとの共通指標であるCTRの約100倍)を記録しており、非常に高い効果を実証しております。』(『デジタルガレージ、スマホ向けリワード広告技術Kiipを活用したO2Oマーケティングを開始参照)


そんなブライアンは、小さな頃からコンピューターが好きだったらしく、7歳の頃から毎日いじっていたとか。特にゲームが大好きでほとんどの時間をゲームに費やしてきたみたいです。(このような経験がアチーブメント広告というアイディアに繋がったのでしょうか)

↑『あまりにもコンピュータばかりいじっていたので、親に隠されちゃったんだよ。』といったエピソードを投資家Kevin Roseとの対談で語っています。本当に好きなことをとことん突き詰める子だったようです。

ブライアンやニックの例が教えてくれることは、好きなことをとことん突き詰め、勝負することの大切さです。

これらのプロダクトを嫌々作らされていたら、17歳や19歳そこらでここまでのレベルのものを作り上げることは不可能でしょう。

この部分に関して、ちきりんさんがブログに綴られていた内容にとても共感できます。

『上記のイギリス人高校生を見ても、「いい大学に行くなんて、なんの意味があるの?」みたいになってきてる。それより自分の好きなことに思い切り熱中して、ここぞと思ったら大胆に勝負する、そういう姿勢が成功に不可欠。 いい大学からいい会社に入ろうとする保守的な人、すなわち、23歳から守りに入ろうとするような人が、10代から「自分で勝負する」生き方をしてきた人に、勝てると思う? 子どもを塾に通わせてせっせと「いい大学」コースを狙わせてる人は、マジで時代がどう変わろうとしているか、よーーーーーーーーく考えたほうがいい。 自分の子供にそんな保守的な姿勢を教え込んでしまったら、わざわざ“まったく時代についていけない人間”をつくろうとしてるようなもんです。』(『つながる世界のその先へ』参照)

本当にその通り。
好きなことを突き詰め、勝負する!
この2つの要素があれば、10代でも十分勝負できる時代です。

アスリートには、実力を披露し評価してもらうプラットフォームとしてオリンピックや選手権といった各大会が用意されているように、エンジニアには、App StoreやGoogle Playといったプラットフォームがあり、彼らに対してオリンピックとしての役割を提供していように思います。

このプラットフォームを通じて、ビジネスの世界にも、どんどんニックやブライアンのような10代の勝負師が現れることを期待しています。面白い時代になったものです。


追記:先日、22歳の若さでCross Pacific Capital Partnersのアドバイザーに就任したとか。

追記:アルファブロガーちきりんさんからTweetを頂きました。うれしい!

大変参考になりました! RT : ちきりんさんのブログにちょこっとだけ掲載させて頂きました。引き続きシリコンバレーから情報をお届けします。RT つながる世界のその先へ! →  
4月30日
ありがとうございます。いつもすごく充実した内容ですね。楽しみにしています。

2013年4月23日火曜日

米Yahooが17歳の少年に社運を賭ける、新体制マリッサ・メイヤーの一手




昨日、史上最年少(15歳)で資金調達を達成した少年ニック・ダロイジオが、17歳で米Yahooへ事業をバイアウトしたというエントリをお届けしました。

そして本日(米国時間4月22日)、彼が制作したアプリ(summly)が米Yahooのサービスに統合され、ローンチされたと公式ブログで発表されました。

しかも、今回はCEOであるマリッサ・メイヤー自らコーポレートブログを綴る本気っぷり!

ブログ内では、"this game-changing technology"とニックのテクノロジーを称賛(買収を自画自賛) しているほどです。

もう、米Yahooは17歳ニックが生み出したプロダクトに社運を賭けていると解釈して良いのではないでしょうか。というのも…。


米Yahooは、世間がデスクトップからインターネットを閲覧していたブラウザ時代に、米国においてポータルサイトナンバー1の地位を確立した企業ですが、昨今ではモバイルへのシフトに失敗し、イケてないサービスを提供し続ける時代遅れの企業との烙印を押されてしまいます。

その状況を改革すべく、2012年7月にマリッサ・メイヤー(Marissa Ann Mayer)が米YahooのCEOに就任しました。(現在37歳)

マリッサは、まだGoogleが社員20名程度しかいない規模の段階で、女性エンジニアとしてジョインした、Google生え抜きの技術屋です。Googleで、ウェブ検索、Gmail、Googleニュースなどを担当していた経験がYahooのモバイルコンテンツ改革に役立つと評価され、Yahooのトップに迎えられました。(マリッサはオファーがあった段階でGoogleの副社長)

先述しましたが、米Yahooはモバイルの分野でダメダメの状態。
世の中は既にモバイルの時代であることは明白で、将来確実にモバイルはパソコンの保有率を上回るでしょう。

その状況下で、コンシューマー向けのメディア事業を主力にしている企業がモバイルでコケるということは、企業の死を意味します。


↑就任後のFortune誌の対談でも米Yahooにとって最重要な戦略はモバイルであると言及。

米Yahooはメリッサ就任後、StampedSnip.italikeJybeといった設立3年以内のデザインに定評のあるモバイル分野の企業を次々に買収していきます。

その5つ目の買収先として選ばれたのが17歳のニックが開発したSummlyなのです。

他の4社の買収額は数百万ドル〜1000万ドルであるのに対して、Summlyは最高値の3000万ドルで買収されていることから、このアプリの期待の大きさが伺えます。


買収の成果は、今回ローンチされた新しいニュースアプリのデザインに表れているのではないでしょうか。(※現在ダウンロードできるのは米国のみ)


↑まだ触っていないので、確かなことは言えませんが、かなりイケてそうです。


ちなみに以前までのインターフェイスはこちら…。↓


確かにだせえ!

米TechメディアのTNW(the next web)も記事の中で、
"The original app looks as if it was designed by a low-grade, code-free app builder, and features a dull interface, an obnoxious color scheme and poorly aligned type."
との酷評っぷり。(元記事)

意訳しますと、
『元のアプリは、まるで質の低い無料のアプリ制作ソフトを使用したかのようだ。インターフェイスの形も酷いし、おまけに不快な色使いに、センスのない並列的な仕様!(ほんとに酷いな…)』
といった感じでしょうか。


米Yahooのみならず、企業は規模が大きくなると、その図体のデカさからイノベーションを起こし難くなるようです。

この点に関しては塩野誠氏の言葉をお借りします

『一般論として企業は大きくなると、創業時、急成長期のアグレッシブさが失われ保守化するものです。創業時であれば創業者の顔やビジョンが一平社員にも見えるものですが、組織が大きくなるにつれ社員の質も変わっていき、大きくて安定してそうだからという理由で入社する人が増えてきます。これは当然のことではありますが、規制などによって守られた業種でなければ、企業は何らかの差別化や新しい価値提案を行っていかなければ成長ができません。
企業が新しいことを産み出していくためには、「小さくいる」ことが非常に重要です。組織のシステムとして、大きくなりすぎたら小さな単位に分割し、権限移譲していく方法以外には、つねに新しいものをつくり出すことはなかなかできません。大きな組織の一部からまったくほかの社員や事業部の「空気を読まない」新しいものをつく出すことは困難です。
たとえば米国テクノロジー系企業では、人材や技術を買うために行う企業買収がありますが、これはマイクロソフトやグーグルなど、大きくなってしまった組織が、周囲のベンチャー企業を研究開発会社として使っているとみることもできます。大きくなった企業が自社内では機動的に新しいものを産み出すことはできないと考え、周囲のベンチャー企業でよいものができたら、人材ごと買って自分のものにしてしまうという考え方です。』


今回のケースは、米Yahooがモバイル分野での生き残りを賭けた買収と解釈して間違いはないでしょう。マリッサ新体制結成後、最大の一手です。
Sumally買収後、天気メールアプリの各インターフェイスも大幅に改善されています。




いやー、17歳の高校生が生み出したアプリが、IT業界の巨人Yahooの社運に大きく影響を与えるとはすごいですね。これぞシリコンバレードリームと言うべきでしょうか。

ちなみに、彼はBloombergの番組でまた自分で会社を作りたいと言っていました。
やるべきだよ!彼の今後に期待です!




2013年4月22日月曜日

史上最年少で150万ドルを調達をした15歳の少年ニック・ダロイジオと米山維斗




先日、米Yahooが17歳の高校生ニック・ダロイジオ(Nick D'Aloisio)が開発するニュース要約アプリSummlyを買収したのをご存知でしょうか。Tech Crunchによると買収額は3000万ドル近いとか。

実は彼、史上最年少(当時15歳)でベンチャーキャピタルから資金調達をした少年なのです。しかもイケメン。


彼はロンドンに生まれ、12歳でプログラミングにハマり、同年「Facemood」というアプリをローンチしています。

その後、15歳でオンライン上の文章を自動要約するアイディアを思いつき、 夏休みを利用してメールやブログの文章を自動翻訳する「Trimit」というアプリをローンチ。
ローンチ後すぐにそのアプリはApp Store注目アプリに選出、また米Tech Crunchでも大きく取り上げられ話題になりました。

その話題を聞きつけ、香港の実業家、李嘉誠(リ・カセイ)が彼にコンタクトを取ったようで、彼は15歳にして李嘉誠のプライベートファンドから約30万ドルを調達します。
※その後、オノ・ヨーコやZyngaのCEOマーク・ピンカスからも投資を受けている。(トータルで153万ドルを調達)

その資金をもとにSummlyを開発。 Summlyはユーザーが好むニュースを400文字に要約してくれるというもので、機能のみならずインターフェイスも素晴らしい(動画参照↓)。


2011年11月にリリースしたSummlyは1年ちょっとで100万ダウンロードを達成。(買収に伴い現在サービス停止中)

2013年3月に米Yahooがモバイルにおけるインターフェイス改善と人材獲得を目的にSummlyの買収を発表しました。

↑買収後にBloombergの番組に出演するニック。マジで17歳なのか?


15歳で1億円以上の金額を調達し、自分で生み出したサービスが30億円近い評価を受け17歳で多額の資金を手に入れるなんて夢のある話ですね。自分が15歳の頃は何をしていたのか思い出すだけでも恥ずかしいです。まあ、人生ヒトそれぞれ。

さて、ここで気になるのが、15歳の日本人でも億単位の資金を調達できるの?というところです。

仮にニックが日本でSummlyを生み出したとしても、15歳そこそこで約1.5億円を国内から調達するのは難しかったのではないでしょうか。

日本のビジネス界では年齢(経験)=バリューとされている傾向にあるので、15歳の小僧に会社経営で億円単位のバリューがあるとは評価され難いでしょう。

一方で、世界のテクノロジー業界では、『素晴らしいプロダクトの前では皆平等』という考え方が根付いています。

むしろ、若さこそがバリューであると評価されるのです。
例えば、15歳の少年に投資するのと、45歳のおっちゃんに投資するのでは、10年後にどちらがイノベーティブなプロダクトを生み出せるかと考えるのです。無論多くの人間が前者と答えます。

現に、GoogleやFacebookといった世界に大きく影響力を与えたプロダクト()を生み出しているのはおっちゃんではなく若い世代なのですから。

また、ニックの場合、ロンドンのみならず、香港から米国西海岸に渡りグローバルに資金調達している部分に注目すべきでしょう。(オノ・ヨーコ、ZyngaのCEO、AirBnBのCEO、俳優のアシュトン・カッチャーなど錚々たる面々から出資を受けています。)

ニックが英語圏に生を受けたことがひとつのアドバンテージであることは間違いありません。
ただ、出資をする方はロンドンであろうが中国であろうが、日本であろうが、関係なく良いプロダクトを生み出してくれる先に資金を提供してくれますから、日本の若い衆もアプリをローンチする際は、英語版も同時期にローンチ。プレスリリースおよびティザーサイトも英語版を用意、海外メディアの取材も受けれるくらいの努力が求められます。ここは英語の話せる人間に協力してもらうなり、翻訳サービスに頼るなり、工夫によっては不可能ではないのかなと思います。

日本の若い人材が世界から見て劣ってるとは思いませんし、幼いうちからプログラミングに触れ、テクノロジーに惚れる子供の母数が増えれば、次のニックが日本から出てきても不思議ではありません。(直近ではインドや中国から出てきそうですが)

さて、実はそんな日本からも『素晴らしいプロダクトの前では皆平等』という考えのもと小学生社長が誕生していました。

1999年生まれの米山維斗(よねやまゆいと)氏が父親とケミストリークエスト株式会社を2011年に設立し、今後取締役社長に就任する予定のようです。(正確には法律上16歳になるまで代表権が持てず、現在代表取締役はお父さんらしい ) ※設立当初小学生、現在中学生です。

この会社は、化学の楽しさを知ってもらいたいという理念のもと、楽しみながら化学結合を学べるケミストリークエストというカードゲームアプリの製造、販売を手がけています。カードゲームの販売は49000部を突破したとか。



米山氏の挑戦を支援したのが、株式会社リバネスと株式会社ヴィレッジの2社です。
前者は、社員の60%以上が博士号取得という科学者集団。後者は、国内でサンドウィッチのサブウェイを展開している企業です。

リバネスが製品の製造、販売の支援。ヴィレッジが資金提供を行い、小学生社長が誕生しました。(↓動画)

会社員の父親が80万円、企業出資が70万円なので、ニックの例と比較すると可愛く聞こえますが、国内でもこのように年齢にとらわれない支援を行うプレイヤーが現れることは明るいニュースなのではないでしょうか。

さて、ニックの話に戻りますが、米メディアの取材で獲得した資金でまた会社を作りたいと話していました。また、将来的には若い人材にどんどん投資していきたいのだとか。

そりゃこんな経験すれば、将来自分が手に入れた一生かけても使い切れないであろう資金の一部を若い人材に投資したくもなるでしょう。(将来も相応の資産があればの話ですが)

このサイクルがシリコンバレーの活力を生み出しています。
日本人もお金持ちは多いのですが、サラリーマン社長がほとんどの社会ではこのサイクルを生み出すことは難しいかもしれませんね。


今月号のWIREDでニックの日本独占インタビューが掲載されています。(米Yahooへの売却前)
興味のある方はチェックしてみてください。


追記:Summlyが統合され、米Yahooのアプリとして正式にローンチされました。

追追記:アルファブロガーのちきりんさんがTweetしてくださいました。

イケメンは趣味の問題ですが、インタビューの方は私もちょっと驚きました。先日「14歳は大人」というエントリを書いたばかりですが・・RT : しかもイケメン。Bloombergでのインタビューなど、高校生とは思えません。

人間の成長ってホントに早いよね。オムツしてた時期含め、17歳しか生きてなくて、こんだけの人物になりえるってどういうこと??  てかね、「とりあえず大学に行って」とか言ってる段階で手遅れ。

2013年4月20日土曜日

米国を牽引する連続起業家イーロン・マスクとは?





日本のスタートアップやwebサービスに詳しくても、シリコンバレーをはじめとする海外の事情はさっぱりという方は多いのではないでしょうか。

海外、特に米国で仕事をしたいと考えている方、また既にしている方で、イーロン・マスク(Elon Musk)氏について知らないという方は今すぐ舌を噛みちぎってください。


彼は、南アフリカで生まれ(母親がモデルだけあってイケメンですね)、10歳からプログラミングをはじめるギーク少年だったようです。

スタンフォードの大学院へ入学するが、すぐに退学。
その後、インターネット決済事業大手のPayPalの創業に関わり、eBayへの売却によっていくぶんかの資金を手に入れます。
彼はいわゆる、PayPalマフィアの一員なのです。
PayPalマフィア『ピーター・ティール、マックス・レフチン、イーロン・マスク、ルーク・ノゼック、ケン・ハワリーの5人によって1998年にアメリカで起業したPayPalは、2002年、eBayによる買収によって多くの人材が流出。かつての社員は、それぞれに、以後の世界の風景を一変させるようなサーヴィスやシステムを生み出した。』(WIRED:「ペイパル・マフィアが世界を変える!?」参照)

彼のすごいところは、PayPal売却後の活躍にあります。
2003年に電気自動車事業のテスラモーターズを立ち上げ、その後一度も黒字を計上しないまま、真っ赤っ赤の状態で2010年に米ナスダック市場に上場。世界からの期待がうかがえますね。ちなみに、Google、トヨタ自動車、Panasonicからも資金調達しています。

Tesla Model Sの紹介ムービー。未来的でイケてます!

また、テスラ・モーターズ立ち上げの1年前、2002年には宇宙輸送ビジネスのスペースXを設立。コスト削減を積み重ね、一般人でも宇宙旅行に行くことができる世界を実現させるのが彼らの目標です。2015年には、ファルコン9ロケットと有人型ドラゴン宇宙船を初飛行させる予定のようです。


SpaceX CRS-1 Missionのムービー。NASAとの連携で着実にデーターを収集しているようです。

次に、太陽光エネルギー事業を手掛けるソーラーシティを2006年に設立。例に漏れず、2012年に米ナスダック市場に上場しています。

テスラモーターズ、SpaceX、ソーラーシティの夢を語るイーロン・マスク

いやー、すごい。何がすごいかと言うと、テスラオーターズ、スペースX、の2社において現在CEO、ソーラーシティでは会長を現役で勤めている凄腕なんです。しかも、彼はまだ41歳!(2013年4月現在)

 

このような起業家をシリアルアントレプレナー(連続起業家)と呼ぶのですが、イーロン・マスクはシリコンバレーでも桁外れです。
挑戦している全ての分野のスケールが大きいですし、ほぼ全ての分野(スペースXはこれからですが)で結果を残しています。まさにアメリカの新産業を引っ張るスーパー起業家です。

日本でも、孫さんや三木谷さんといった優秀な起業家はいらっしゃいますが、あの規模のビジネスを連続して仕掛けていくエネルギーを持った起業家は少ないように思います。(日本は法的に不可能?)

そもそも、日本でイーロン・マスクのような起業家は受け入れられるのでしょうか?
「同時に2〜3社の経営なんて無理に決まっている。ひとつの会社に集中すべきだ!」、「何か怪しい手法で儲けようとしているのではないか?」と各メディア、評論家の袋叩きになりそうな気もします。

ホリエモンこと堀江貴文氏も、宇宙ビジネスに兼ねてから興味があり、ライブドアの事業として取り組みたかったようです。
彼はライブドアというひとつの会社で多くの事業を展開する考えのようでしたが、イーロン・マスクと同じく、連続起業家の素質を持っている方だと思います。

ただ、多くの事業にスピード感を持ち展開しようとすると、ライブドア事件のように世間に怪しまれ(もちろん堀江さんの説明不足もありますが)、潰されてしまうのが日本社会のようです。

ひとつの事業に尽力するというのが日本の社会が考える美学なのかもしれませんね。(現に合理的なのかもしれませんが。)

イーロン・マスクも堀江さんも、金儲けのためではなく、本人が心からやりたくて事業に取り組んでいることは事実です。ただお金が欲しいのであれば、ある程度手に入れた段階で降りるのが合理的です。お金もあるのにわざわざしんどい思いをして新しい分野に挑戦するなんてありえません。

筆者は日本からもこのようなエネルギーを持った挑戦者がもっともっと出てきて欲しいと心から願っています。このようなチャレンジャーを応援し、讃えることのできる社会になることが、日本から世界を盛り上げていくためには必要です。そうでなければ、優秀な人材は挑戦の場を求めて、シリコンバレーのような人材集積地に流れていってしまうでしょう。

さて、その堀江さんが先日シャバに出てきました。これから宇宙ビジネスやネットの分野で仕掛けていくみたいなので、早速応援していきたいです。

 

【関連エントリ】
・『PayPal、テスラモーターズ、スペースX創業者イーロン・マスクを理解するための3つの動画
・『連続起業家としての堀江貴文
・『今、世界中の起業家が宇宙ビジネスに挑戦するワケ

2013年4月19日金曜日

シリコンバレーの学生は起業にリスクを感じない?の真実




『シリコンバレーの優秀な学生の多くは卒業後に起業する』といった話を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。


日本でスタートアップ向けのアクセラレーターとして活躍されている孫泰蔵氏(ソフトバンク社長、孫正義の実弟)も、自身のFacebookでこう伝えています。



『昨晩ある米国のたいへん著名なインベストメントバンカーと食事をしながらいろんな話をしたのだが、その中でも次の話は非常に印象的だった。

「もともと米国の上位の大学ではいちばん優秀な学生は起業をし、その次に優秀な学生はベンチャーに就職し、優秀とは言い難い学生が大企業に就職するという傾向があったが、最近はその傾向にますます拍車がかかっており、昨年スタンフォード大学の学生にアンケートを取ったら、卒業したら全員起業すると言っていたそうだ。なんと全員だよ!信じられるかい?」(以下省略)』
http://goo.gl/iO9fX

この話しの真意は定かではありませんが、シリコンバレーに身を置いていた自身の経験からいって、これはまんざらウソではありません。
スタンフォードをはじめとした有名ビジネススクールの学生は、卒業後に起業するケースが非常に多いです。

というのも、たとえ彼らがスタートアップでポシャっても、簡単にFacebookやGoogleといった優良企業に就職することができるため、彼らはリスクなど感じません。

言ってしまえば、彼らは就職活動の一環で起業し、うまく行けば次のGoogleやFacebookを生み出し、下手こいたら今のGoogle、Facebookのような企業で働ける。これで人生御の字なのです。

あちらでの採用はほとんどが紹介であるのに加え、学歴至上主義がこのシステムを創り上げています。
『今、うちのボスが◯◯な人間を探してるんだけど、ウチに来ないか?君なら経験もあるし、有名なビジネススクールも卒業しているから安心して紹介できるよ。』
といった会話から採用がどんどん決まっていきます。

企業からしたら知人を介した採用の方が、腕の良い人材が見つかる確立が高いですし、知人を間に置くことで、何かあった場合の訴訟リスクを軽減させるといったメリットがあり、非常に合理的です。

このようなシステムがシリコンバレーのような活力あるスタートアップの生態系を生み出していると言えるでしょう。

シリコンバレーで挑戦をするのであれば、いかにこの生態系に入り込むかが非常に重要になります。

向こうで起業に挑戦したいのであれば、スタンフォードやUCバークレーといった名門ビジネススクールを挟むといった手段も考えられます。(今すぐやりたいアイディアがある人には遠回りになるのでオススメしませんが。)

また、海外で目立った学歴がない人間でも、良い形でスタートアップに挑戦できていたのであれば、たとえ失敗したとしても、その挑戦が評価され現地企業が受け皿になってくれる可能性もあります。

日本でも孫泰蔵代表率いるMOVIDA JAPANが、2030年までにアジアにシリコンバレーのような生態系を創るといった挑戦をされています。
http://www.movidainc.com/


今後、日本の優秀な人材も過度のリスクを感じることなくスタートアップに挑戦できる世界が実現すれば、次のGoogleやFacebook、SONY、Panasonicなどの企業がどんどん日本から生まれてくるかもしれません。ワクワクしますね!