日本のスタートアップやwebサービスに詳しくても、シリコンバレーをはじめとする海外の事情はさっぱりという方は多いのではないでしょうか。
海外、特に米国で仕事をしたいと考えている方、また既にしている方で、イーロン・マスク(Elon Musk)氏について知らないという方は今すぐ舌を噛みちぎってください。
スタンフォードの大学院へ入学するが、すぐに退学。
その後、インターネット決済事業大手のPayPalの創業に関わり、eBayへの売却によっていくぶんかの資金を手に入れます。
彼はいわゆる、PayPalマフィアの一員なのです。
※PayPalマフィア:『ピーター・ティール、マックス・レフチン、イーロン・マスク、ルーク・ノゼック、ケン・ハワリーの5人によって1998年にアメリカで起業したPayPalは、2002年、eBayによる買収によって多くの人材が流出。かつての社員は、それぞれに、以後の世界の風景を一変させるようなサーヴィスやシステムを生み出した。』(WIRED:「ペイパル・マフィアが世界を変える!?」参照)
彼のすごいところは、PayPal売却後の活躍にあります。
2003年に電気自動車事業のテスラモーターズを立ち上げ、その後一度も黒字を計上しないまま、真っ赤っ赤の状態で2010年に米ナスダック市場に上場。世界からの期待がうかがえますね。ちなみに、Google、トヨタ自動車、Panasonicからも資金調達しています。
↑Tesla Model Sの紹介ムービー。未来的でイケてます!
また、テスラ・モーターズ立ち上げの1年前、2002年には宇宙輸送ビジネスのスペースXを設立。コスト削減を積み重ね、一般人でも宇宙旅行に行くことができる世界を実現させるのが彼らの目標です。2015年には、ファルコン9ロケットと有人型ドラゴン宇宙船を初飛行させる予定のようです。
↑ファルコン9ロケットに関するイメージムービー。胸が震えますよ。
次に、太陽光エネルギー事業を手掛けるソーラーシティを2006年に設立。例に漏れず、2012年に米ナスダック市場に上場しています。
いやー、すごい。何がすごいかと言うと、テスラオーターズ、スペースX、の2社において現在CEO、ソーラーシティでは会長を現役で勤めている凄腕なんです。しかも、彼はまだ41歳!(2013年4月現在)
このような起業家をシリアルアントレプレナー(連続起業家)と呼ぶのですが、イーロン・マスクはシリコンバレーでも桁外れです。
挑戦している全ての分野のスケールが大きいですし、ほぼ全ての分野(スペースXはこれからですが)で結果を残しています。まさにアメリカの新産業を引っ張るスーパー起業家です。
日本でも、孫さんや三木谷さんといった優秀な起業家はいらっしゃいますが、あの規模のビジネスを連続して仕掛けていくエネルギーを持った起業家は少ないように思います。(日本は法的に不可能?)
そもそも、日本でイーロン・マスクのような起業家は受け入れられるのでしょうか?
「同時に2〜3社の経営なんて無理に決まっている。ひとつの会社に集中すべきだ!」、「何か怪しい手法で儲けようとしているのではないか?」と各メディア、評論家の袋叩きになりそうな気もします。
ホリエモンこと堀江貴文氏も、宇宙ビジネスに兼ねてから興味があり、ライブドアの事業として取り組みたかったようです。
彼はライブドアというひとつの会社で多くの事業を展開する考えのようでしたが、イーロン・マスクと同じく、連続起業家の素質を持っている方だと思います。
ただ、多くの事業にスピード感を持ち展開しようとすると、ライブドア事件のように世間に怪しまれ(もちろん堀江さんの説明不足もありますが)、潰されてしまうのが日本社会のようです。
ひとつの事業に尽力するというのが日本の社会が考える美学なのかもしれませんね。(現に合理的なのかもしれませんが。)
イーロン・マスクも堀江さんも、金儲けのためではなく、本人が心からやりたくて事業に取り組んでいることは事実です。ただお金が欲しいのであれば、ある程度手に入れた段階で降りるのが合理的です。お金もあるのにわざわざしんどい思いをして新しい分野に挑戦するなんてありえません。
筆者は日本からもこのようなエネルギーを持った挑戦者がもっともっと出てきて欲しいと心から願っています。このようなチャレンジャーを応援し、讃えることのできる社会になることが、日本から世界を盛り上げていくためには必要です。そうでなければ、優秀な人材は挑戦の場を求めて、シリコンバレーのような人材集積地に流れていってしまうでしょう。
さて、その堀江さんが先日シャバに出てきました。これから宇宙ビジネスやネットの分野で仕掛けていくみたいなので、早速応援していきたいです。
【関連エントリ】
・『PayPal、テスラモーターズ、スペースX創業者イーロン・マスクを理解するための3つの動画』
・『連続起業家としての堀江貴文』
・『今、世界中の起業家が宇宙ビジネスに挑戦するワケ』